10000アクセス記念企画
森茉莉と動物たち

ひゃっほー。1万アクセスだよーん。
それにしても記念企画やるのって久しぶり。ずっとサボってたからなあ。サボりすぎだなあ。見ててくれる人もいるのになあ。
スマン!
つーことで今回は「森茉莉ひとくちメモ」第2弾。森茉莉の飼っていたペットについてちょっと小噺なぞ。 
森茉莉は動物好きであった。有名なのは晩年に飼っていた黒猫ジュリエットだよな。しかーし、茉莉は犬好きでもあったのだ。

参考文献は『記憶の絵』と、あと森茉莉全集に入ってる随筆とか森類の随筆とか森鴎外の書簡集とかもろもろ。
アタマの中でぐにゅぐにゅこねて書いたナリよ。

では次回、15000アクセス記念企画で逢おう!>誰かネタくれ



幼い頃の茉莉の家には、犬がいた。
まずは父の森鴎外が、日露戦争から連れて帰ってきた犬。軍医として出征していった先で飼い、犬も懐き、手放し難くてついに日本へ連れてきてしまったという犬である。名前はジャンといい、セントバーナード種のようなでっかい白黒斑の犬だったらしい。
茉莉は幼かったため、この犬についてはよく覚えていないようだ。両親の話によると、よく首を抱いていたそうだが。

次に飼ったのがポンコという犬である。茉莉は犬が飼いたくて仕方なかったのだが、茉莉の母親の志げが犬嫌いであったため、なかなか飼うことができなかった。ポンコは茉莉の成績が良かったごほうびに飼ってもらった犬で、茶と白の斑の雑種だった。ポンコという名前は、当時のマンガにあった犬の名前からとったという。
ポンコは非常に賢い犬だった。家族が外出すると、家の前の道まで来て座り、家族の姿が見えなくなるまで見送った。犬嫌いの志げも「あれをみると嫌っているのが可哀想になる」と言ったくらいの健気さだったらしい。

やがてポンコは子供を生み、黒チビちゃあ(茶)チビが庭をじゃれ合って駆け回るようになる。ある夕方、まだ小さかった黒チビを父の鴎外が地面に投げつけるところを茉莉は目撃してしまう。黒チビは「クヮン」と魂の声で鳴いたそうだ。何故温厚な鴎外がそんな乱暴なことをしたのか理由はわからない。『何か気に入らないことがあったのだろう』と茉莉は推察する。しかし幼い茉莉がこっそり見てしまったそのショックな光景は、茉莉の脳裏に晩年までずっと残ることになる。

次に飼ったのは、鴎外がメフィと名づけた犬である。茶色で耳の立った気性の荒い犬だという。この犬に関しては、茉莉はあまり思い入れがないらしく、詳しい記述もない。

そして茉莉は結婚する。結婚してからも犬を飼った。キャピという臆病な犬だったらしい。往来で他の犬と会うと、尻尾を巻いて隠れるような犬である。茉莉の陰鬱な結婚生活を描いた小説『青い栗』にも同名のキャピという犬が出てくる。『青い栗』のキャピは小さな白い、毛の長い犬で、誰にも構ってもらえない可哀想な犬だ。散歩にも連れて行ってもらえないので庭には糞が散らばり、長い毛が風に飛んで『白い魔のように駆け回っていた』とある。

茉莉は離婚し、母と弟の類と一緒に借家に住むようになる。鴎外は既に亡く、兄の於兎と妹の杏奴は結婚して別に生活している。
そこで飼ったのがボワ(森)と名づけた犬である。赤犬で、秋田犬だと言われて買ったのだが、実は『支那産かなにかの』犬だったらしい。ボワはある日突如として気性が荒くなり、鶏を噛み殺す。それからよそのお宅の鶏を次々に噛み殺すようになり、苦情がくるようになって茉莉も類も大変に困ったらしい。
森(ボワ)という名の犬は茉莉の耽美少年愛小説『枯葉の寝床』にも出てくる。美青年の可愛がっていた大きな猟犬で、恋人の美少年がそれに嫉妬して犬を苛めるので、知り合いに預けるのである。そして犬は美青年が迎えに来てくれるのを待ちながら死ぬ。これも可哀想な犬だった。

歳をとりアパート暮しになった茉莉は流石に犬を飼うことはできなくなる。そこで飼ったのが黒猫のジャポである。頭が良く、美しく、品がある猫で、茉莉の小説『黒猫ジュリエットの話』のモデルにもなった。
ジャポは首の下に3本ほど白い毛があるのを除けば足の裏まで真っ黒ないわゆる「からす猫」だった。からす猫は商売繁盛を招く吉猫らしい。茉莉はジャポを抱いて買い物に行き(要するに見せびらかしに行くのだ)、猫を誉められたり、あちこちの商店主から猫を譲って欲しいと言われたりしては得意になっていたらしい。

そして茉莉は猫科の大きな動物も愛した。『もしあたしにお婿さんか恋人を紹介しようという人がいるとしたら、それよりもライオンか黒豹の仔が欲しい』と茉莉はエッセイに書いている。

そして晩年、茉莉はかつて飼っていた犬たちを懐かしく思い出す。そしてどの犬もそれぞれに正直で愛らしかったが、最も好きだったのは最初に飼ったポンコだという。そして茉莉はこう書く。『彼女は或夜一人で物置に入って、死んだ。』と。